
こんにちは,弾丸うどんライダーkazumiです。
今回も讃岐うどんの話はありません。
うどんの話以外に興味のない方はどうぞここで回れ右してください。
私がなぜ信楽まで行ったかというと,
近江牛の陶板焼きステーキを食べに行ったわけではありません。
目的は美術館です。
一度は行ってみたいと思っていたんですが,ようやく実現しました。
今回はライブでもありません。
建築です。
建築のお話です。
ルーブル美術館のガラスのピラミッドやワシントンナショナルギャラリーを設計した
世界的な建築家I.M.ペイの数少ない日本の作品。
信楽のMIHO MUSEUMに行ってきました。


いやあ,それにしてもこんな所にあるとは。
そして,こんな所だとは。
信楽ICを降りて,山々に囲まれた水田の広がる道をどんどん進みます。
ところどころに,
MIHO MUSEUM→
と看板があるので心強いのですが,
でなければ,どこかで道を間違ったとしか思えない道をズンズン進みます。
そして,小さな川にかかった小さな橋の手前の分岐を山側に入るんです。
これ,看板がなければ絶対に入らないような小路です。
だからこそ看板があるんですけどね。

渓流沿いの道を登っていくといきなり見えてくる駐車場。
その横にはコンクリートの建物。
私は直感的に,山中に潜む新興宗教の教団建物のように見えました。
実はそこは美術館ではなく,レストランとミュージアムショップが入った建物。
レセプション棟というらしいです。
美術館,つまりミュージアム棟はここから歩いて10分ばかり。

この道のりは小さなシャトルカートを利用してもいいんですが,
ぜひ,ぜひ歩いてほしいんです。
なだらかな傾斜の両側はたくさんに木々が植えられています。
眼を下に向ければ,山の水分をたっぷり吸って膨らんだ苔が,
毛足の長い絨毯のように足元を包んでいます。
美術館の建築を指揮した建築家のI.M.ペイは中国の故事に想を得て,
この地を桃源郷に変えるつもりで桃の代わりに枝垂れ桜を植えたそうです。


ミュージアム棟までの道,アプローチロードは桃源郷への入り口。
正面にトンネルが見えてきました。
薄明るいトンネルには仄かに間接照明が施されています。
トンネルは大きくカーブして先が見えません。



自分の足音がコツコツとトンネル内に響くのが分かります。
ほかのお客さんの話し声や,カートに乗ったみなさんの歓声だけでなく,
耳を澄ますと,トンネルの外にいる鳥の声や風の音まで聞こえます。
カーブを抜けていきなり正面が明るくなりました。
上からは何でしょうか直線状の構造物が何本も前方に走っています。

橋です。
トンネルを抜けると,そこは大きな谷だったんです。
何本ものワイヤーで支えられた橋がミュージアム棟まで架かっていたんです。
自然の美しさをそのままに保存した中に埋め込まれた人工物の美。
みごとに,2つの対照的な美しさが共生共存しています。


正面にはミュージアム棟。
中に入ると,これまた目を見張ります。
エントランスホールはボールジョイントのような球体から伸びる
何本ものフレームで構成されていて,全体はガラス張り。



日差しは無数の木製のルーバーによって和らげられ,
床や壁に複雑な幾何学模様の影を落とします。
正面には日本画のような3本の松。
その向こうには別の山々の尾根が連なっています。



展示室は左右の廊下の向こうにあります。
T字型に伸びる廊下は,さっきまでの無機質な幾何学構造のエントランスとは正反対に,
しっとりとした温かみを感じます。
これは廊下の壁や床の材質のせい。
フランス産のマニドレというライムストーンだそうです。
I.M.ペイが設計した新ルーブルのレセプションホールにも使われているそうで,
ペイさんのお気に入りの材質だそうです。



ホールには木が植えられていたり,日本庭園があったり。
公衆電話にライムストーンと同色のカバーをかけてあったり,
細やかな配慮も忘れてはいません。
階段や明り取りの窓や,どこをとってもほれぼれするほど美しいです。




自然の美とトンネルや橋の人工的な美。
フレームでできた幾何学的な美と柔らかい人の肌のような石の建物。
対照的なもの同士がたがいに対峙しながら破たんなく調和しています。
すばらしい建築物です。
建築としての美だけでも十分に美術館の用をなしています。
もう,一度レセプションホールに戻って,向こうの尾根を眺めていると,
これこそ怪しい建物。
じつは,このMIHO MUSEUMはある宗教法人によって建てられたもので,
向こうに見える建物は付属のMIHO美学校のチャペルと
三味線のバチに見えるものはカリヨン塔なんだそうです。


帰りはカートに乗ってみたんですが,
電気自動車なんですね。
音もなく滑るようにトンネルに吸い込まれて,あっという間にレセプション棟に。
何でしょうね。
竜宮城から帰ってきて現実に戻ったかのような不思議な感覚でした。

このMIHO MUSEUMは年間,春・夏・秋の特別展を催す3つの期間だけ開館されます。
今はその端境期にあたっていますので休館です。
次は7月4日から 『 若冲と蕪村 』 展。
尾形光琳が没した1716年に生まれた伊藤若冲と与謝蕪村の生誕300年記念展です。
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テーマ:建築デザイン - ジャンル:学問・文化・芸術
- 2015/06/15(月) 17:55:00|
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